「社員にもっと主体的に動いてほしい」
「言われる前に考えてほしい」
「現場から提案が出る会社にしたい」
経営者の方から、このようなご相談を受けることがあります。
ただ、社員が自ら動くかどうかは、本人の性格や能力だけで決まるものではありません。
会社の方向性が伝わっているか。
社員の役割が明確か。
評価の基準が見えているか。
上司と部下が相談できる関係になっているか。
こうした土台が整っていないと、社員は動きたくても動けません。
今回は、社員が自ら動く組織になっているかを確認する7つのチェックリストをお伝えします。
自社の状態を確認しながら読んでみてください。
チェック1:会社の方向性が社員に伝わっているか
まず確認したいのは、会社がどこに向かっているのかが社員に伝わっているかです。
経営者の頭の中には、
「こういう会社にしたい」
「お客様にこういう価値を届けたい」
「社員にはこう成長してほしい」
という想いがあるはずです。
しかし、それが社員に伝わっていなければ、現場の判断はバラバラになります。
社員が自ら動くには、判断の軸が必要です。
会社が何を大切にしているのか。
何を優先するのか。
どのような行動を歓迎するのか。
ここが明確になっていないと、社員は自分で考えて動けません。
確認ポイント
- 会社の存在意義を社員が自分の言葉で説明できる
- 社長の想いや方針が、朝礼や会議で繰り返し伝えられている
- 社員が迷ったときに立ち返る判断基準がある
- 理念や方針が、飾りではなく日常業務に結びついている
注意サイン
社員が、
「結局、何を目指しているのか分からない」
「社長の言うことが毎回変わる」
「方針はあるけど、現場の仕事とつながっていない」
と感じている場合、会社の方向性が十分に伝わっていない可能性があります。
チェック2:社員一人ひとりの役割が明確になっているか
社員が自ら動けない大きな理由の一つが、自分の役割が分からないことです。
担当業務は分かっている。
でも、会社から何を期待されているのかは分からない。
この状態では、社員は挑戦できません。
役割とは、単なる業務分担ではありません。
どの成果を求められているのか。
どこまで自分で判断してよいのか。
どんな行動を期待されているのか。
会社全体の中で、どの位置を担っているのか。
ここまで見えて、初めて社員は動きやすくなります。
確認ポイント
- 職種や役職ごとの役割が言語化されている
- 社員が「自分に期待されていること」を理解している
- どこまで自分で判断してよいかが明確になっている
- 上司と部下の間で役割認識にズレが少ない
注意サイン
社員が、
「これは自分がやっていいことなのか分からない」
「どこまで任されているのか分からない」
「結局、上司に確認しないと進められない」
と感じている場合、役割が曖昧になっている可能性があります。
チェック3:評価される行動が明確になっているか
社員は、会社が何を評価しているかをよく見ています。
どれだけ「挑戦してほしい」と伝えていても、実際には無難にこなす人だけが評価されていれば、社員は挑戦しません。
どれだけ「提案してほしい」と伝えていても、提案した人が否定されたり、仕事だけ増えたりすれば、社員は提案しなくなります。
社員が自ら動く組織では、評価される行動が明確です。
何を頑張れば評価されるのか。
どんな成長が求められているのか。
どのような行動が会社にとって大切なのか。
ここが見えているから、社員は安心して動けます。
確認ポイント
- 評価基準が社員に説明されている
- 役割と評価項目がつながっている
- 挑戦や改善提案が正しく評価されている
- 社長や上司の気分で評価が変わると思われていない
- 昇格・昇給の条件が一定程度見えている
注意サイン
社員が、
「何を頑張れば評価されるのか分からない」
「結局、上司に気に入られた人が評価される」
「提案しても評価につながらない」
と感じている場合、評価制度の前に、評価される行動の共通理解が不足している可能性があります。
チェック4:社員が意見を出しても否定されない空気があるか
社員が自ら動く会社では、意見や提案が出ます。
ただし、意見が出るかどうかは、社員の能力だけでは決まりません。
職場の空気に大きく左右されます。
過去に提案してすぐ否定された。
意見を言ったら面倒な仕事を任された。
上司と違う考えを言いにくい。
失敗すると強く責められる。
このような経験があると、社員は静かになります。
表面上は問題がないように見えても、実際には、社員が意見を出すことを諦めている場合があります。
確認ポイント
- 会議で社員から意見や質問が出る
- 提案が出たときに、まず背景を聞いている
- 採用できない提案にも、理由を説明している
- 意見を出した人が損をしない空気がある
- 改善提案を歓迎する姿勢が管理職にある
注意サイン
社員が、
「言ってもどうせ変わらない」
「提案すると仕事が増える」
「余計なことは言わない方がいい」
と感じている場合、組織の中で提案の芽が消えている可能性があります。
チェック5:上司と部下が定期的に対話できているか
社員が自ら動くには、日常的な対話が必要です。
評価面談のときだけ話す。
問題が起きたときだけ呼び出す。
指示や注意はあるが、成長に向けた対話は少ない。
この状態では、社員は相談しにくくなります。
特に、30名を超える組織では、社長が全員の状態を見ることが難しくなります。
そのため、管理職やリーダーが部下と対話する仕組みが必要です。
1on1は、単なる雑談ではありません。
社員が自分の役割を理解し、課題を整理し、次の行動を決める場です。
確認ポイント
- 上司と部下の1on1や定期面談がある
- 面談が単なる近況確認で終わっていない
- 部下の悩みや成長課題を上司が把握している
- 管理職が部下との関わり方を学んでいる
- 社員が困ったときに相談できる相手がいる
注意サイン
社員が、
「相談しても意味がない」
「上司は自分のことを見ていない」
「問題が起きたときだけ話をされる」
と感じている場合、対話の仕組みが不足している可能性があります。
チェック6:社員が成長の道筋を描けているか
社員が自ら動く会社では、社員が自分の未来を描けています。
この会社で何を学べばよいのか。
どのスキルを身につければ次の役割に進めるのか。
どのように成長すれば給与や役職が上がるのか。
自分はこの会社でどんな人生を描けるのか。
ここが見えていると、社員は前向きに努力しやすくなります。
反対に、成長の道筋が見えない会社では、社員は目の前の仕事をこなすだけになりやすいです。
確認ポイント
- 等級や役職ごとの成長ステップがある
- 必要な知識・スキル・姿勢が整理されている
- 教育支援制度や学習の機会がある
- 1on1で今後の成長について話している
- 社員が「次に何を頑張るべきか」を理解している
注意サイン
社員が、
「この会社でどう成長すればいいか分からない」
「頑張っても先が見えない」
「何を学べば評価されるのか分からない」
と感じている場合、成長の道筋が見えていない可能性があります。
チェック7:制度やルールが運用されているか
最後に確認したいのは、制度やルールが実際に運用されているかです。
人事制度を作った。
評価シートを作った。
理念や行動指針を作った。
1on1を導入した。
しかし、作っただけで終わっている会社も少なくありません。
制度は、作った瞬間ではなく、運用して初めて意味があります。
朝礼で繰り返し伝える。
1on1で役割や成長課題を確認する。
評価面談で基準をすり合わせる。
必要に応じて制度を見直す。
このような運用があって、社員の行動は変わっていきます。
確認ポイント
- 作った制度やルールが日常業務で使われている
- 朝礼や会議で会社の考え方を繰り返し伝えている
- 評価制度が形だけになっていない
- 1on1や面談が継続されている
- 制度を定期的に見直している
注意サイン
社員が、
「制度はあるけど、実際には使われていない」
「評価シートを書くだけで終わっている」
「理念や行動指針を見返す機会がない」
と感じている場合、制度が現場に浸透していない可能性があります。
診断結果の見方
以下の7項目について、自社に当てはまるものを確認してみてください。
- 会社の方向性が社員に伝わっている
- 社員一人ひとりの役割が明確になっている
- 評価される行動が明確になっている
- 社員が意見を出しても否定されない空気がある
- 上司と部下が定期的に対話できている
- 社員が成長の道筋を描けている
- 制度やルールが運用されている
6〜7個当てはまる会社
社員が自ら動く土台はかなり整っています。
今後は、制度や1on1の質をさらに高めることで、管理職育成や社員定着にもつながりやすくなります。
4〜5個当てはまる会社
一部は整っていますが、まだ仕組みが分断されている可能性があります。
たとえば、評価制度はあるが役割が曖昧。
1on1はあるが成長支援につながっていない。
方針はあるが現場の判断基準になっていない。
この段階では、バラバラになっている要素をつなげることが重要です。
0〜3個当てはまる会社
社員が自ら動くには、まだ土台づくりが必要です。
この状態でいきなり評価制度だけを入れても、社員からは「管理される仕組みが増えた」と受け取られる可能性があります。
まずは、会社の方向性、社員の役割、上司と部下の対話から整えることをおすすめします。
社員が自ら動く会社に必要なのは、制度だけではありません
社員が自ら動く組織を作るために、人事制度は重要です。
ただし、人事制度だけで会社が変わるわけではありません。
必要なのは、
会社の方向性
社員の役割
評価される行動
意見を出せる空気
上司と部下の対話
成長の道筋
制度の運用
これらをつなげることです。
社員が動かない原因は、社員の意欲だけではありません。
社員が動けるだけの判断基準があるか。
役割が明確になっているか。
提案してもよい空気があるか。
成長の道筋が見えているか。
ここを整えることで、社員の行動は少しずつ変わっていきます。
私自身、社労士法人のNO.2として5名から40名規模への拡大を経験する中で、制度やルールを作るだけでは組織は変わらないことを痛感してきました。
良かれと思って細かく指示しすぎたことで、かえって社員が確認待ちになってしまったこともあります。
社員からの提案に対して、現実的な判断を早く返しすぎて、意見が出にくい空気を作ってしまった反省もあります。
だからこそ、今は強く感じています。
社員に主体性を求める前に、
会社側が社員が主体性を発揮できる土台を作る必要があります。
まとめ
社員が自ら動く組織かどうかを確認するには、次の7つを見直すことが大切です。
- 会社の方向性が社員に伝わっているか
- 社員一人ひとりの役割が明確になっているか
- 評価される行動が明確になっているか
- 社員が意見を出しても否定されない空気があるか
- 上司と部下が定期的に対話できているか
- 社員が成長の道筋を描けているか
- 制度やルールが運用されているか
社員が自ら動かないと感じたとき、社員を責める前に、まずはこの7つを確認してみてください。
組織の課題は、どこか一つだけに原因があるとは限りません。
方向性、役割、評価、対話、風土、制度運用がつながっていないことで、社員が動きにくくなっていることがあります。
当事務所では、30〜100名規模の中小企業・医療福祉法人に向けて、
社長の想いが現場に届き、社員が自ら動き出す人事制度・組織風土づくりを支援しています。
まずは、自社の組織課題を整理するところから始めたい方は、お気軽にご相談ください。
