「主任を任命しても、なかなか育たない」
「リーダーにした途端、本人が苦しそうになる」
「現場をまとめてほしいのに、結局施設長や管理職が判断している」
「次の主任候補が見つからない」
医療・福祉法人では、このような悩みがよく起こります。
ただ、主任・リーダーが育たない原因は、本人の能力不足だけではありません。
多くの場合、法人側に、
主任・リーダーが育つための役割・権限・育成・評価・相談体制が整っていないことが原因です。
今回は、主任・リーダーが育つ法人かどうかを確認する10のチェックリストをお伝えします。
チェック1:主任・リーダーの役割が明確になっているか
主任・リーダーが育たない法人では、そもそも役割が曖昧です。
「現場をまとめてほしい」
「職員を育ててほしい」
「もっとリーダーらしくしてほしい」
このように伝えても、本人からすると何をすればよいのか分かりません。
主任・リーダーには、現場業務だけでなく、
- 新人・若手職員の育成
- 現場の小さな違和感の共有
- 業務改善の提案
- 部下との面談
- 法人方針の現場浸透
- 多職種連携の橋渡し
といった役割があります。
まずは、法人として主任・リーダーに何を期待するのかを言語化する必要があります。
確認ポイント
□ 主任・リーダーの役割が文書化されている
□ 一般職員との違いが明確になっている
□ 本人が自分の役割を理解している
□ 上司と主任・リーダーの間で期待値にズレが少ない
チェック2:責任と権限の範囲が整理されているか
主任・リーダーに責任だけを求めても、権限がなければ動けません。
現場をまとめてほしい。
部下を指導してほしい。
問題が起きたら対応してほしい。
しかし、判断権限がない。
部下の評価に関われない。
改善提案をしても通らない。
上司が守ってくれない。
この状態では、主任・リーダーは育ちません。
大切なのは、すべての権限を渡すことではありません。
どこまで主任・リーダーが判断してよいのか
どこから上司に相談すべきなのか
部下指導の場面で上司がどう支えるのか
この線引きを明確にすることです。
確認ポイント
□ 主任・リーダーが判断してよい範囲が決まっている
□ 相談すべき案件の基準がある
□ 部下指導の際に上司が支える体制がある
□ 責任だけでなく、必要な権限も与えられている
チェック3:主任・リーダーになる前の準備期間があるか
主任・リーダーは、任命した日から急に育つものではありません。
突然、
「来月から主任をお願いします」
「あなたがリーダーです」
「現場をまとめてください」
と言われても、本人は戸惑います。
主任・リーダー候補の段階から、
- 後輩指導を任せる
- 小さな改善活動を任せる
- 会議で意見を出してもらう
- 上司の判断基準を共有する
- 面談に同席してもらう
といった経験を積ませることが大切です。
主任・リーダーは、任命してから育てるのではなく、
任命前から育て始めることが重要です。
確認ポイント
□ 主任・リーダー候補を早めに見つけている
□ 任命前に小さな役割を任せている
□ 後輩指導や改善活動の経験を積ませている
□ いきなり任命せず、段階的に育成している
チェック4:部下との関わり方を学ぶ機会があるか
現場業務ができることと、人を育てることは別です。
主任・リーダーには、部下との関わり方を学ぶ機会が必要です。
特に医療・福祉の現場では、
「若手職員にどう接すればよいか分からない」
「注意するとハラスメントと言われそうで怖い」
「どこまで踏み込んでよいか分からない」
「価値観の違いに戸惑う」
という悩みが出やすいです。
部下育成は、気合いや経験だけではうまくいきません。
話を聞く力。
期待を伝える力。
改善点を伝える力。
感情的にならずに指導する力。
1on1や面談を進める力。
これらを学ぶ機会が必要です。
確認ポイント
□ 主任・リーダー向けの育成研修がある
□ 部下への注意・指導の仕方を学ぶ機会がある
□ 1on1や面談の進め方を学んでいる
□ ハラスメントを恐れすぎず、必要な指導ができる支援がある
チェック5:主任・リーダーが相談できる相手がいるか
主任・リーダーは、現場と管理職の間に立つ存在です。
部下からは相談や不満が上がってくる。
上司からは方針や改善を求められる。
自分も現場業務を抱えている。
この立場は、想像以上に負荷がかかります。
そのため、主任・リーダー自身が相談できる相手が必要です。
困ったときに上司へ相談できるか。
定期的に振り返る場があるか。
主任・リーダー同士で悩みを共有できるか。
外部の専門家に相談できるか。
ここがないと、主任・リーダーは孤立します。
確認ポイント
□ 主任・リーダーが上司に相談できる場がある
□ 定期的に振り返り面談をしている
□ 主任・リーダー同士で悩みを共有する機会がある
□ 問題を一人で抱え込ませない仕組みがある
チェック6:育成の時間が業務として確保されているか
主任・リーダーに「部下を育ててほしい」と言いながら、育成の時間がまったく確保されていない法人があります。
現場業務で手一杯。
急な欠勤対応で余裕がない。
記録や会議も多い。
面談の時間が取れない。
新人指導が後回しになる。
この状態では、主任・リーダーは育成に取り組めません。
育成は、空いた時間にやるものではありません。
法人として、業務の一部に位置づける必要があります。
確認ポイント
□ 主任・リーダーが部下育成に使う時間がある
□ 1on1や面談の時間が予定に組み込まれている
□ 新人・若手育成が主任任せになりすぎていない
□ 育成も主任・リーダーの重要業務として扱われている
チェック7:評価・処遇が主任・リーダーの役割とつながっているか
主任・リーダーになると、責任は増えます。
しかし、評価や処遇が変わらなければ、本人は報われません。
現場では、
「主任になっても大変なだけ」
「責任だけ増える」
「上と下に挟まれてつらそう」
「自分は主任になりたくない」
という空気が生まれることがあります。
主任・リーダーを育てたいなら、役割と評価・処遇をつなげる必要があります。
何ができれば評価されるのか。
どのような成長段階があるのか。
役職手当や昇給にどう反映されるのか。
部下育成や改善活動が評価されるのか。
ここが見えることで、主任・リーダーの役割に意味が生まれます。
確認ポイント
□ 主任・リーダーの評価基準がある
□ 部下育成や改善活動が評価されている
□ 役割の重さに応じた処遇が検討されている
□ 主任・リーダーになるメリットが見えている
チェック8:法人の方針が主任・リーダーに浸透しているか
主任・リーダーは、法人の方針を現場に届ける存在です。
しかし、主任・リーダー自身が法人の方向性を理解していなければ、現場には伝わりません。
経営者や施設長の想い。
法人として大切にしている価値観。
利用者様・患者様への向き合い方。
職員に求める行動。
今後の組織づくりの方向性。
これらを主任・リーダーが理解している必要があります。
主任・リーダーが法人方針を理解していないと、現場ではその人の感覚だけで判断が行われます。
その結果、法人の方針と現場の行動がズレます。
確認ポイント
□ 主任・リーダーが法人の方針を理解している
□ 法人理念と現場行動のつながりを説明できる
□ 経営者・施設長の想いを現場に伝える機会がある
□ 主任・リーダーによって現場への伝え方が大きくズレていない
チェック9:主任・リーダー同士が学び合う場があるか
主任・リーダーは、それぞれの現場で悩みを抱えています。
新人が育たない。
若手との関わり方が分からない。
部下に注意できない。
シフト調整で悩んでいる。
多職種連携がうまくいかない。
現場から不満が出ている。
こうした悩みを、一人で抱えさせてはいけません。
主任・リーダー同士が学び合う場があると、組織全体のレベルが上がります。
他部署の工夫を知る。
悩みを共有する。
うまくいった関わり方を共有する。
法人全体で判断基準をそろえる。
この積み重ねが、主任・リーダー育成につながります。
確認ポイント
□ 主任・リーダー会議がある
□ 会議が報告だけで終わっていない
□ 悩みや事例を共有する場がある
□ 部署を超えて育成や改善の工夫を共有している
チェック10:任命後も継続的に育てる仕組みがあるか
主任・リーダーは、任命して終わりではありません。
むしろ、任命してからが本番です。
任命後に、
何を期待するのか。
どのように育てるのか。
どのタイミングで振り返るのか。
困ったときに誰が支えるのか。
どのように評価するのか。
ここがなければ、本人任せになります。
主任・リーダーを育てる法人は、任命後も継続的に関わります。
定期面談。
育成計画。
役割の振り返り。
研修。
評価面談。
上司からのフィードバック。
この仕組みがあることで、主任・リーダーは少しずつ成長します。
確認ポイント
□ 任命後の育成計画がある
□ 定期的に役割や課題を振り返っている
□ 上司からフィードバックを受ける機会がある
□ 主任・リーダーを本人任せにしていない
診断結果の見方
以下の10項目について、自法人に当てはまるものを確認してみてください。
- 主任・リーダーの役割が明確になっている
- 責任と権限の範囲が整理されている
- 主任・リーダーになる前の準備期間がある
- 部下との関わり方を学ぶ機会がある
- 主任・リーダーが相談できる相手がいる
- 育成の時間が業務として確保されている
- 評価・処遇が主任・リーダーの役割とつながっている
- 法人の方針が主任・リーダーに浸透している
- 主任・リーダー同士が学び合う場がある
- 任命後も継続的に育てる仕組みがある
8〜10個当てはまる法人
主任・リーダーが育つ土台は、かなり整っています。
今後は、主任・リーダーごとの課題に合わせて、1on1の質、部下育成力、改善提案力を高めていく段階です。
主任・リーダーが育つことで、現場の問題が早く共有され、職員定着やサービス品質の向上にもつながりやすくなります。
5〜7個当てはまる法人
一部の仕組みはありますが、まだ分断されている可能性があります。
たとえば、
役割はあるが権限がない。
任命はしているが育成計画がない。
主任会議はあるが報告だけで終わっている。
評価制度はあるが、部下育成が評価されていない。
この段階では、すでにある仕組みをつなぎ直すことが重要です。
0〜4個当てはまる法人
主任・リーダー育成は、本人任せになっている可能性があります。
この状態で主任・リーダーにだけ、
「もっとしっかりしてほしい」
「現場をまとめてほしい」
「部下を育ててほしい」
と求めても、本人が疲弊してしまう可能性があります。
まずは、主任・リーダーの役割、権限、相談体制、育成機会から整えることが必要です。
主任・リーダーが育つ法人に必要な考え方
主任・リーダーが育つ法人は、任命して終わりにしません。
選ぶ
任せる
教える
支える
評価する
振り返る
この流れを作っています。
主任・リーダーは、現場の要です。
主任・リーダーが育つと、法人には次のような変化が起きます。
- 現場の小さな問題が早く見える
- 新人・若手職員が相談しやすくなる
- 施設長や管理職に判断が集中しにくくなる
- 現場から改善提案が出やすくなる
- 職員の定着につながる
- 法人の方針が現場に届きやすくなる
逆に、主任・リーダーが育たない状態を放置すると、責任感の強い人ほど疲弊します。
そして、現場では、
「主任になっても大変なだけ」
「自分はリーダーになりたくない」
「管理職は損な役回りだ」
という空気が生まれてしまいます。
これは、法人にとって大きな損失です。
私自身の経験から感じていること
私自身、社労士法人のNO.2として、5名規模から40名規模への拡大に関わってきました。
その中で強く感じたのは、組織が大きくなるほど、中心メンバーだけでは限界が来るということです。
最初は、自分で判断した方が早い。
自分で動いた方が確実。
自分で説明した方が伝わる。
そう感じる場面が多くあります。
しかし、それを続けると、周囲は確認待ちになります。
自分は忙しくなり、周囲は育ちにくくなります。
私自身も、良かれと思って細かく指示しすぎたことで、かえって周囲が自分で判断しにくくなってしまった経験があります。
また、社員からの提案に対して、現実的な判断を早く返しすぎて、意見が出にくい空気を作ってしまった反省もあります。
主任・リーダー育成も同じです。
「仕事ができる人を主任にする」だけでは不十分です。
「主任なんだから自分で考えて」と伝えるだけでも育ちません。
法人側が、
主任・リーダーに何を期待するのか
どこまで任せるのか
どう育てるのか
困ったときにどう支えるのか
を設計する必要があります。
主任・リーダーが育つ法人は、本人の努力だけに頼っていません。
育つための土台を、法人として作っています。
まとめ
主任・リーダーが育つ法人かどうかを確認するには、次の10項目を見直すことが大切です。
- 主任・リーダーの役割が明確になっているか
- 責任と権限の範囲が整理されているか
- 主任・リーダーになる前の準備期間があるか
- 部下との関わり方を学ぶ機会があるか
- 主任・リーダーが相談できる相手がいるか
- 育成の時間が業務として確保されているか
- 評価・処遇が主任・リーダーの役割とつながっているか
- 法人の方針が主任・リーダーに浸透しているか
- 主任・リーダー同士が学び合う場があるか
- 任命後も継続的に育てる仕組みがあるか
主任・リーダーが育たない原因は、本人の能力不足だけではありません。
役割、権限、育成、評価、相談体制が整っていないことで、力を発揮できていない場合があります。
当事務所では、医療・福祉法人を中心に、
社長・理事長・施設長の想いが現場に届き、職員が自ら動き出す人事制度・組織風土づくりを支援しています。
主任・リーダーが育たない。
次の管理職候補が見つからない。
現場が一部の人に依存している。
職員が自ら動く組織を作りたい。
そのように感じている方は、まずは自法人の組織課題を整理するところから始めてみてください。
